えいおにIBDログ

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管理栄養士 兼 クローン病患者のえいおにがクローン病に関する情報を発信します!

クローン病について知ろう!~病気の成り立ちから治療まで~

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クローン病は現在の医療では完治が難しい病気です。

一生付き合っていかなければならない病気だからこそ、どんな病気なのかは知っておく必要があるでしょう。

クローン病と診断されたばかりの人には本記事が病気について知る機会に、

クローン病歴が長い人には本記事が病気について再確認する機会になれば幸いです。

クローン病とは?

クローン病は口から肛門までのすべての消化管に炎症や潰瘍を形成する病気で、再燃(活動)と寛解を繰り返すのが特徴です。

厚生労働省特定疾患登録患者数は2015年時点で39,799人であり年々増加傾向にあります。日本の人口で考えるとクローン病患者は4000人に1人程度の割合です。

クローン病の病態

日本では男女比が2:1と男性が多く、20~24歳の若年層に発症しやすい傾向があります。

病気の主体としては、小腸から大腸を中心とした炎症と潰瘍ですが、小腸・大腸以外にも口から肛門まですべての消化管に発症する可能性があります。

特徴的な病変としては、腸管の走行に合わせてできる縦長の縦走潰瘍とぼこぼことした腸管粘膜を形成する敷石状粘膜があります。

また、炎症・潰瘍以外にも狭窄や瘻孔などが出現するのも特徴で、これらの再発・再燃を繰り返しながら進行していきます。

クローン病の原因

クローン病はいまだに原因不明の病気ではありますが、要因としては遺伝、感染症、免疫異常などが考えられています。また、絶食による炎症反応の改善がみられることから、腸内細菌が影響している可能性も示唆されています。

クローン病の症状

主な症状としては腹痛、下痢、発熱、肛門部痛、出血、食欲不振、体重減少が挙げられます。

腸管にできた潰瘍や炎症の痛みによって腹痛や出血が起こるだけでなく、炎症部や潰瘍部から腸液が染み出てくることにより下痢も起こりやすくなります。

また肛門部による潰瘍は排便時の痛みに繋がる上に、潰瘍形成が続くと膿が溜まり常時痛みが出現する状態にも陥ります。

長期間続く炎症により食欲が落ちたり、それによって体重が極端に減少することもあります。

クローン病の診断

クローン病の診断は特徴的な縦走潰瘍・敷石像など内視鏡的所見が中心です。しかし特徴的な内視鏡所見が得られない場合には、生検病理、広範囲の炎症、肛門や上部消化管病変により診断できます。

クローン病の分類

クローン病は➀罹患範囲、②炎症パターン、③重症度によって分類されます。

罹患範囲による分類

クローン病の病変は、縦走潰瘍、敷石像または狭窄などの存在部位により小腸型・小腸大腸型・大腸型に分類されます。

炎症のパターンによる分類

炎症が主で狭窄や瘻孔などの合併がない炎症型、瘻孔形成を有する瘻孔型、狭窄病変を有する狭窄型に分類されます。

重症度分類

クローン病の重症度によって軽度、中等度、重度に分類します。

【軽症】 CDAI:150~220 合併症:なし

     炎症(CRP):わずかな上昇

【中等症】CDAI:220~450 合併症:明らかな腸閉塞などなし

     炎症(CRP):明らかな上昇 治療反応:軽症治療に反応しない

【重症】 CDAI:450<   合併症:腸閉塞・膿瘍など

     炎症(CRP):高度上昇   治療反応:不良

クローン病の合併症

クローン病では、腸管以外にも全身のさまざまな部位に合併症が出現する可能性があります。腸管外合併症は40~60%のクローン病患者に認められ、腸管の炎症により悪化するものと、炎症とは関係なく悪化するものがあります。

壊疽性膿皮症

痛みを伴った潰瘍病変で、すね足の前面やストマ周囲に起こりやすいです。

結節性紅斑

数cm大の痛みを伴った赤い斑が出現し、皮膚の生検を行うことで確定診断に至ります。

足に出現しやすく、関節炎も同時に起こり、クローン病の初期症状として出現することもあります。

アフタ性口内炎

口にできる潰瘍です。痛みが強いため水を飲むのも困難になることがあります。

クローン病の治療以外にもステロイド薬を用いたうがいをすることで改善することがあります。

末梢性関節炎

クローン病において高い頻度で出現する合併症です。

膝、足、股、手など大きな関節で起こる痛みはクローン病との関連があるものが多いですが、指などの小さな関節で起こるものは、クローン病の悪化とは関係なく出現する可能性があります。

骨粗鬆症

炎症を抑えるために用いられるステロイドによる副作用で骨粗鬆症が起こります。

また、クローン病による低栄養、低カルシウム血症、活動の低下による影響もありますので、高齢者だけでなく若い人たちにも注意が必要です。

クローン病の経過

クローン病は再燃と寛解を繰り返しながら徐々に悪化をしていく病気です。

初期では炎症が主な症状であっても、再燃を繰り返していくうちに狭窄や瘻孔、膿瘍などの腸管合併症を引き起こし、外科手術が必要になる場合も少なくありません。

診断時から狭窄や瘻孔がみられる患者は18.6~37.9%。炎症中心の患者が狭窄や瘻孔を引き起こす可能性は、10年で17~29%、20年で40%ともいわれています。

また、手術を行う割合は5年で30.3%、10年で45.5%、15年で73.7%であり、手術後の再燃で手術になる割合は3年で12.5%、5年で26~43.5%、10年で61~69.2%と報告されています。

クローン病の治療

クローン病の治療には、食事や経腸栄養などによる栄養療法と、内服や生物学的製剤による薬物療法が用いられます。

栄養療法

経口栄養

腸管への負担を減らすために低脂肪・低残渣食を心がけます。

脂質の摂取は腸管の活動を増やすため傷ついた腸の負担になることがあります。

また、炎症の原因とひとつとされておいる炎症性サイトカインは脂肪細胞から放出されるため、脂肪制限により炎症性サイトカインの発生を抑える効果もあります。

寛解期であれば脂質20~30g以下、活動期であればさらなる制限が必要です。

低残渣食は主に食物繊維の制限を行います。

具体的には食物繊維10g未満を目標とし、消化の悪い根菜類、きのこ類、海藻類を避けた食事が望ましいです。

経腸栄養

腸管の活動を抑えながら十分な栄養を摂取するためには食事以外にも経腸栄養剤を使用するのが望ましいです。

クローン病で主に用いられる栄養剤は成分栄養剤であるエレンタールであり、栄養成分が吸収しやすい状態まで分解されているのでクローン病におけるもっとも安全な食事ともいえます。

中心静脈栄養

活動期には腸管の安静を保つために完全絶食を行い、栄養補給のために注人静脈栄養を導入します。

腕などの細い血管から行う点滴とは違い、首などの太い血管から栄養を入れるためより多くのエネルギーを投与できるというメリットがあります。

薬物療法

一般的にStep-up療法とAccelerated step-up療法とTop-down療法があります。

Top-down療法とは、初期より生物学的製剤と免疫調整薬の併用から始めることで、step-up療法とは、5-ASA製剤や栄養療法から徐々に治療強化する方法、Accelerated step-up療法は早めに治療強化していく方法を指します。

腸管ダメージリスク因子の評価を行い、➀広範囲の小腸病変、②内視鏡的に重症な潰瘍、③診断時の肛門病変、④狭窄型もしくは穿孔型、⑤若年発症、⑥複数回の手術、⑦喫煙から複数のリスクが認められた場合にはTop-down療法、リスクが少なかった場合はStep-up療法が選択されます。そしてStep-up療法で寛解維持が可能な場合はそのまま継続、活動性が持続する場合はAccelerated step-up療法へ移行し治療を強化します。

まとめ

今回はクローン病について病気の成り立ちから治療までお話ししてきました。

クローン病は現在の医学では完治の難しい病気です。

一生付き合っていく病気だからこそ、クローン病について理解し、病気や症状と上手に付き合っていくようにしましょう。